最初は、騒がしい人がいるな、程度の認識。
彼の周りには学園内でも(色んな意味で)有名な人が多くて目立っていたし、
本人も周りにまけないくらい顔が知れていた。
いや、至る所にひょっこり顔を出しては誰かにちょっかいをかけて去っていく。
そんな彼の存在を知らない人なんて存在するのだろうか、と疑問に思うくらいだ。
そして彼の緑色の髪の毛は、屋上からでもよく見えた。
僕はいつからか、無意識の内にその緑色を探し、目で追うようになっていた。
彼、蝶野と、なにか、昔の記憶がだぶるような、おかしな感覚はもうずいぶん前からあった。
少し疑問に感じながらも、いつものように屋上で紙ヒコーキをつくっては飛ばしていた。
今日も退屈ないちにちだな、なんて暢気に考えながら。
「楽しい?」
後ろを向いたら彼がいて、すごく驚いた。考えてたこと、見透かされる気がして。
「なにが?」
「それ」
つくりかけの紙ヒコーキを指差しながら言った。
「…うん」
「ふうん、変なヤツ」
そう言って、少し笑った。
それだけだった。それだけのやりとりだった。彼のうしろすがたと、それより小さい誰かの姿がだぶる。
「あっ」
そうだ、僕は彼を、よくしっている。あのころよりは少し低い、笑い声。
小さいころ、よくいっしょに、遊びまわった。たしか名前は・・・、かおるちゃん。
それに気づいたときにはもう既に姿はみえなくて、彼らしいな、と思った。
記憶の中の彼ではなくて、この学校でよくみかける、彼らしいなって。
今度あったら、話しかけてみよう。僕のこと、わかるかな、おぼえているかな。