こんなにも、人とかかわる事を面倒だと思ったのははじめてだ。
俺にとって、学校で関わるヤツなんか誰だって同じ。愛想良くして話を聞いてれば大抵のやつは慕ってきたし、俺に反感をもっているやつだっていただろうけど、目に見えないところでの気持ちはどうだってよかった。大人も子供も同じだ。
俺が何を考えていようと、表面だけ取り繕っていればいい。ゲームよりも簡単だ。ゲームは取り繕った嘘をついたりしないし、俺の顔色を伺ったりなんてしない、俺をうらぎらない、現実よりもよっぽどまし。そう思って生きてきた、のに。
「おみくんは、相手のきもちがわからないことに、不安になったりしないの?」
「相手にだって俺の気持ちなんかわからないだろ」
「わからないよ、わからないから、人とかかわるのは大変なことでしょ?」
「はぁ?」
『人とかかわるのは大変なこと』と言う、ひとつ年上のこの男は、思えば出会ったときから反りが合わない。動作も緩慢で、ひとつ言葉を話すのにも時間がかかる。その仕草も態度も俺をイラつかせる。最初のころに比べれば俺の前ではよく話すようになったけれど、それは言えばケンカが増えたというだけの話だ。
人とかかわりたくがない為に、表面だけでいきてきた俺と、本当は孤独を嫌っているのに、心に嘘をつけなかったうみは、本当に正反対だと思った。
年上にぞんざいな口をきいたりなんて、したことがなかった。面倒なことは避けてきたから、ケンカだってほとんどしたことがなかった。俺の『彼女』を貶すようなやつらには、さみしい奴だなって鼻で笑ってやればそれで充分だったし。
そもそもどうしてこいつはこうなのだろう、と考えている時点で、俺はそいつと「関わりたい」と思っている証拠だ。
「ゲームは自分を裏切らない、って思うのは、人から裏切られたくないと考えてる証拠じゃないの」
そんな風に考えるのか、と少し関心した。俺は面倒なのがいやなだけだ。裏切ったり、裏切られたり。好きとか、嫌いとか、他人の目を気にしているだけの恋愛ごっことか、誰かに依存したりだとか。リアルの恋愛を否定しているわけではないけれど。俺は、なんとなく、もてあます程の激しい感情もって誰かに接することもなく、をまあこの人なら結婚してもいいかという人と結婚して、子供ができて。そんな風に人生を過ごすんだとぼんやり考えていた。
ただ少し、この感情は、と思う。相手のことを好きになるのと嫌いになるのは少し似ていて、全然違って。俺がこのひとに向ける感情はもしかしたら、なんて考えたりもする。誰かのことを考えて、気持ちが動くことが、不思議で、でもそんなに嫌じゃなくて、そう考えてる自分が嫌になったりして。
まだ春と言える季節だ。俺たちには長いようで短いような、時間がある。なぜか急がなきゃいけないような、焦れた気持ちが自分の中にある事を自覚して、そう言い聞かせた。