「目って、日焼けするんですって」
「め?」
「あの、なんでしたっけ、もうまく?」
いつものように、畑仕事をしながら三宅先輩と無駄話をする。1日の中でいちばん好きな時間。
それは教室で誰かが話していたような内容を、ふと思いだしただけだった。
「だから、昔はもっと空が青かったなぁ、って思うの 気のせいじゃないってきいて」
「へーそうなんだ!しらなかった」
「眼鏡かけてたら、紫外線?とかちょっと和らいだりしないのかな」
「え?」
「三宅先輩の目で見たら、もしかしたら世界が俺より鮮やかに見えてるのかなって」
「あー、それはどうかな。僕は畑仕事で外に出てる時間も多いし。それに君より少し、長く生きてるよ」
「あ、そっか。馬鹿だなー、俺」
「そうだよー、それに俺は目も悪いし」
目の前でほほえむ三宅先輩。先輩の目で、世界を見渡したら、どんな風に映るんだろう。
少しの沈黙、今日も空は充分すぎるくらいに鮮やかだ。
「見てみたいな、」
「えっ?」
「あ、いや、あの、みんなの目でみたら、どうやって見えるのかなって」
少し、ごまかした。俺が知りたいのは、みんな、なんかじゃなくて。
「んー、そうだなー、見たいような、見たくないような…」
「ですよね。俺…欲張りですよね」
決して手に入らないと知っていても、諦められなくて、想うのも厭うのに、浮かぶのはそればかりだった。
「俺、幸せ者だとおもうんすよね。なのに、これも、あれもって欲しいものばっかり増えてって。ぜーんぶ欲しいし、やってみたいんです」
口が過ぎる。こんな話をしようと思っていたわけではなかった。今日も、放課後、三宅先輩と無駄話。俺のいちばん好きな時間。
「我儘ばっかりで、いやになる」
「いいんじゃない?」
「え?」
「我儘くらい、言ったって。我儘じゃない人生なんて楽しくないよ、きっと。…なんて、ね」
少し、焦る。
見透かされてるような気がしたのだ。だけど、その上でこんな風に、接してくれるのなら、これ以上の幸せはないのだと、気がついてしまった。
先輩は少し照れくさそうに笑って、続けた。
「そうだな、俺も」
「えっ?」
「俺も八木沢の目で、見てみたいかも。どうやって映るのかなって」
揺れる。
俺はたぶん、ものすごくまぬけな顔をしていたんだろう。こんな風に浮き沈みの激しい自分の気持ちに、ああこういうことか、と妙に悟ったような気持ちになってしまった。
恥ずかしいけれど、恋ってこういうことだな、なんて。